コンビニエンスストア (convenience store) とは、年中無休で長時間の営業を行い、小規模な店舗において主に食品、日用雑貨など多数の品種を扱う形態の小売店である。
略称は「コンビニ」「CVS」などで、これらの略称が定着する前の1980年代以前には「コンビ」「深夜スーパー」などという呼び方もされた。
多くの場合、大手資本によるチェーン店舗として展開されている。
日本の経済産業省の商業統計での業態分類としての「コンビニエンスストア」の定義は、飲食料品を扱い、売り場面積30平方メートル以上250平方メートル未満、営業時間が1日で14時間以上のセルフサービス販売店を指す。
なお、コンビニエンスストアの名称は、日用に供する食品・商品=コンビニエンス商品を扱う店と言う意味であったが、日本では利便性=コンビニエンスの店とされている。
[編集] 日本での状況
[編集] 店舗の経営形態
現在のコンビニエンスストアの大半はフランチャイズ・チェーン方式(FC方式)であり、ボランタリー・チェーン方式やチェーン等に属さない独立経営のコンビニエンスストアは少なくなってきている。
以下はフランチャイズ・チェーンを前提として述べる。
[編集] フランチャイズ店舗
店舗経営者(フランチャイジー)の多くは個人である。複数店舗を経営する場合には法人化することが多い。他方で、主にビルや運輸関係(バスターミナル・倉庫業など)の施設を所有する既存の会社法人が、サイドビジネスの一環として自社が保有する建物内や遊休地などに店舗を設置して運営することも見られる。
個人経営の店舗の場合、多くは経営者夫妻で夫が店舗オーナー・妻が店長という肩書きになるが、複数店舗を運営する場合には店舗毎に店長職を社員として雇用することが見られる(いわゆる「雇われ店長」)。既存の会社法人が店舗を運営する場合、オーナーは置かず専任の店長として社員を配置することが多い。いずれにしても、これ以外の従業員はほとんどがアルバイト・パートなどの非正規雇用の形態で就労する。これらの場合、従業員は店舗を運営する経営者や法人によって募集・雇用・解雇が行われ、賃金が支払われる。
フランチャイズ・チェーンであるから当然であるが、フランチャイズ店舗はチェーン本部(フランチャイザー)とはフランチャイズ契約を締結し、これに基づいて商標の使用が許可され、店舗運営の指導を受け、商品の供給を受ける関係になる。店舗用地を借りている場合にもフランチャイズ店舗のオーナーが自身で事業用定期借地権を締結し、本部側は紹介・仲介程度の関与であり、ほとんどの場合、本部とフランチャイズ店舗の間に資本・人材・雇用の直接的な関係はない。
「FC店」という表記を用いる場合もある。この場合、基本的にはこのフランチャイズ店舗を指し、後述のフランチャイザー直営店舗は除外する事も少なくない。
[編集] フランチャイザー直営店舗
コンビニエンスストアの店舗の一部には、チェーン本部や地区事務所など、フランチャイザーが自ら経営する直営店舗が存在する。ただし、基本的にはフランチャイズ店舗がコンビニチェーンの規模拡大の中核を担っており、直営店舗はチェーン全体を見渡した場合には少数派である。
日本の大手チェーンの場合、本部や地区事務所による直営店舗には、以下の様なものが見られる。
- 地区事務所などの拠点に併設されている店舗
- ドミナント・経営戦略・地域戦略・収益性などの観点から、チェーン本部・地区事務所自身が出店・運営している店舗
- 店舗運営上における何らかの大きな新機軸が含まれているなど、実験的要素が強い、あるいは新業態型の店舗運営ノウハウの収集を目的の一つとして設置された店舗[1]
- 店舗テナント契約によって、店舗運営についてフランチャイザー直営で行う事を指定されている店舗(大型複合商業施設内や公的機関の庁舎内などに設置されている店舗によく見られる)
- 大規模イベントの開催などに伴う期間限定営業の臨時店舗
- FCオーナーの引退・撤退・経営破綻、もしくは疾病・事故・突然死などにより運営が継続できなくなった店舗
- FCオーナーの重大な契約違反行為[2]や、逮捕・失踪などを理由に強制的に契約解除され、直営化された店舗
この中でも、主に1と2に該当する店舗は、通常の営業の中でフランチャイザー社員やFCオーナー・店長候補者の実践的な研修・教育の場、新機軸を伴うサービスやプライベートブランド・デリカ類の試作商品の先行テストの場などとしても使用されている。
他方、特に6や7のケースでは、他の経営者に経営が委譲されるか店舗閉鎖(閉店)の処理が完了するまでの一時的措置であることが多い。だが、実際には大半のケースで事態の発生を理由に短期間ないし即時に店舗閉鎖の措置が取られる[3]。実際に本部が一時的な直営化を行ってでも維持するのは、ドミナントや地域戦略、他チェーンの展開への対抗などの観点から必要な立地に所在しているなど、本部側が維持を必要とする店舗に限られている[4]。他方で、不祥事や契約トラブルを理由としてチェーン本部が契約に基づいて強制的に店舗閉鎖の処置を取った店舗などでは、コンビニチェーンのイメージ保護やマスコミ対策などの目的から、チェーン本部が店舗建物を賃貸していた地主から建物上屋を買い取るなどした上で、店舗閉鎖後ごく短期間で店舗の施設一切を破却・撤去し、跡形も無く更地化する場合もある。
また、地域単位での初出店の場合などには、当初はフランチャイザーが直営店舗としてオープンさせ、経営が安定した頃合を見て店舗オーナー候補者を募るなどしてフランチャイズ店舗へと転換する手法が取られる事もある[5]。
[編集] 立地場所・構造
立地場所として、当初は市街地を中心に店舗展開したが(理由後述)、最近では都市周辺の住宅地や、郊外・地方の幹線道路沿いへのロードサイド店舗としての様態を持つ店舗が目立つ。コンビニが市街地から発祥した理由としては、当時の大規模小売店舗法による規制や不動産バブルによって、既存市街地に新規の商業床(立地条件)を確保することが困難となった大手百貨店が、新業態として小さい店舗を始めたということが言われている。
市街地では徒歩5 - 10分程度の近距離に同一チェーンの別店舗が複数あるなど、同一地域内に特定チェーンの店舗が林立していることも多いが、これはチェーン本部によるドミナント戦略と呼ばれる販売戦略に基づく出店戦術である。特に各店舗毎の商品在庫数が少ない事から、商品を配送する場合に、各店舗が離れすぎていると、配送の時間とコストが掛かり過ぎて非効率となるため、地域ごとにベンダーと呼ばれる配送センターを設置して、その周辺に円を描くように多くの店舗を出店することにより高効率の配送ルートを確立して配送コストを削減している。また、他チェーンに先んじて集中的な出店を行う事で、他チェーンによる展開と競合の余地を狭め、その地域のシェアを独占する事もチェーン本部にとっては大きな目的となる。
配送センターは共同配送化が進められており、かつての一般的な商店では問屋ごとに店舗への配送が行われていたものを、共同配送センターで各問屋からの商品をある程度ひとまとめにして店舗に配送することで、1店舗あたりの配送回数の削減を実現している。各店舗は概ね日に2~5回程度(チェーンによって異なる)の商品配達を受けている。
商品は随時配送される事により、店舗側には余剰在庫が置かれない事も大きな特徴で、店頭陳列がそのまま商品在庫になっているため、これまでの多くの一般の商店の形態とは異なり、商品や業務用具をストックしておくバックヤードを最小限度に設計でき、限られた店舗スペースを有効に活用できる。このことは、同時に建物のダウンサイジングを可能とし、建設費・光熱費などの圧縮や、店内の隅々まで店員の目が行き届きやすくなるなどといった商品管理・防犯、従来の雑貨店では出店不可能であった都心部のビルなどのより狭小なスペースへの出店と各種サービスを可能にさせるなど、様々な副次的なメリットを生み出した。商品種類が非常に多岐に渡るため、それらを余す事無く店頭展示するためにも、バックヤード側から商� ��補充が可能なウォークイン式冷蔵庫や、商品の後入れ先出しを容易にする可動構造の陳列棚、緻密な商品レイアウト等の、様々な工夫が徹底されている。
店舗の構造としては、独立した建築物の場合には現在は軽量鉄筋プレハブ工法による簡易建築が基本であるが、木造FP工法もファミリーマートなど一部チェーンで用いられている。建物部材についてはチェーン毎に共通化された特徴が見られ、本部サイドによる計画的な大量一括調達により部材のコストダウンが図られると同時に、共通の部材による外観デザインはそのチェーンを示す意匠的な特徴となっている。ただし、設置場所が景観条例などの対象区域である場合には、これに添った特殊な外観の店舗デザインが用いられることもある。ビル・マンション・商業施設などへ出店する場合は1階への設置が基本であり、飲食店や金融機関で多く見られる様な空中店舗や地下店舗はビル・官公庁や複合施設内での事例はあるものの、大都� ��圏でも少数で例外の範疇である。
建物は道路(正面)や駐車場に向いた一面の側壁が大きく開かれ、足元近くから天井高さまでガラス張りになっており、4-8面程度並べた大型ガラスに面して雑誌の棚が配置されているものが一般的である。これは防犯上とマーケティング上の理由によるもので、店舗内に常時(立ち読みの)客が店外から見える状態を維持することで、他の客の誘引効果を図り、また強盗などを抑止する効果を兼ね、客が店内に入りやすい心理的作用をもたらしている。旧来より防犯ビデオ設置店は多かったが、防犯カメラ以外にも凸面鏡を配して、店内の隅々までカウンターに居る店員からの目が届くような防犯上の配慮がなされている。
セブン-イレブンなどの一部店舗では、正面のガラス窓にシャッターが設置されており、台風などの災害時[6]や暴動発生時など近隣での非常事態発生時や、電気設備の点検・改修時[7]などには一時的に閉める事が可能である。また、出入り口は内外両方向に引く観音開きが多く、自動ドアを導入している店舗は初期投資やメンテナンスコストの都合などから比較的少なかったが、近年に新規開店した店舗ではバリアフリー推進の観点から、以前は自動ドアの店舗が無かったコンビニチェーンの店舗でも導入するケースが増えている。同様に、最近の店舗にはバリアフリー対応型トイレを設置している店舗も多い。また、大学病院や総合病院などの大型医療機関が近隣にある店舗を中心にオストメイト対応トイレを持つものも見られる。
近年は公共施設の病院・大学・庁舎内などへの出店が増えている。病院内初出店は2000年8月10日 - 恵寿総合病院内にローソン、庁舎内の初出店は2002年9月18日 - 大阪府警本部庁舎内にファミリーマート、2004年11月22日 - 福岡市役所内にローソン、2005年1月25日 - 東京都庁舎内にセブン-イレブンが開店している。また、高等学校・中学校内初出店は2006年4月11日 - 栃木県宇都宮市の宇都宮短期大学附属高等学校・中学校キャンパス内にファミリーマート(営業時間は7時45分 - 8時25分、12時20分 - 13時10分と、食事時間のみ、近隣店のサテライト店舗扱い)が購買部として進出している。九州旅客鉄道の関連企業であるJR九州リテールがエリアフランチャイズとしているam/pmが自社の駅構内に店舗を設けている。神奈川県伊勢原市の産業能率大学湘南キャンパスにもファミリーマートが出店している。
2000年代以降、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアへの出店が活発化している(首都高速6号三郷線の八潮パーキングエリアなど)。
[編集] 駐車場
モータリゼーションが進展した現代の日本においては、自家用車が日常生活の移動手段として必要不可欠のものになり、店舗にもそれに対応した設備が求められる。
コンビニエンスストアも、とりわけ郊外部の主要街道沿いや新興市街地ではほとんどの店舗が自動車での来店を前提にした典型的なロードサイド店舗としての形態を持ち、その例に違わず数台からそれ以上の一定規模の駐車場空間を保有することが事実上の絶対条件となっており、その駐車場はドライブインのように利用されたり、あるいはコンビニで買った弁当や食料品を自分の車に持ち込んで休憩することにも利用されている。特に郊外店・街道沿いや、港湾地域・工業団地・倉庫街など店舗の立地条件次第では、普通乗用車の駐車スペース以外にも複数台の大型トラックの同時駐車や数時間程度の休憩にも対応できる広い駐車スペースを確保している事が要求される。満車状態が多発することはビジネスチャンスの逸走の要因であ� ��店舗のみならずチェーンのイメージ的にも良くないこととされ、郊外部などでは新規開店後しばらく経ってから隣接する空き地や畑などに駐車場が拡張されてゆくことも珍しいものではない。
駐車場の収容能力は普通乗用車で数台から十数台程度が一般的である。ただし、同一敷地内に飲食店・書店・カー用品店などが立地している場合や、サービスエリアや道の駅などにテナントとして入っている店舗では、駐車場は同一敷地内の他施設と共同使用のものとして利用され、実質的に数十台から百台以上が同時に駐車可能という規模になることがある。