私は検索エンジンで見つかった写真を使用することができます
わかりやすい PNG の話 for Web
- はじめに:本気で $5,000 ?
- 私の使ってるソフトは大丈夫?
- GIF の何が問題か?
- ライセンス違反の対象となる行為
- ライセンスの形態
- ビルボード Web サイト LZW ライセンス
- イントラネット LZW ライセンス
- その他のライセンス
- 今後どうするかについて
- 私の違法な GIF はバレるでしょうか?
- 違法な GIF を見つけ出す手段
- GIF 画像を使いつづける選択
- PNG フォーマット
- PNG ではなぜ特許の問題が発生しないのか?
- PNG に移行する選択
- PNG の普及を妨げる要因
最近まで私は、「GIF は特許問題がヤバいから、あんまり使わない方がいいかな。」、程度の認識しかありませんでした。しかし 米 Unisys 社のガイドラインによりますと、ライセンスを取得していないツールで作成した GIF 画像を貼り付けた Web の管理者は、米 Unisys 社に対し、
lower-cost, one-time license fee
(低価格で、しかも一回だけ払えば済むライセンス料)
を支払わなくてはならないそうです。そしてその低価格なライセンス料は、
A one-time payment of $5,000.00 US for each license agreement
(1 ライセンス、$5,000)
ということです。ところで $5,000 っておいくら?今日の朝刊によれば、レートは $1=120円らしい。
$5,000 = 600,000円 のライセンス料!!
なんて法外なお値段なのでしょうか! 私は、$5,000 が決して lower-cost だとは思えません。私は、本当にこんな値段を払わないといけないのでしょうか? 私の友人は払っているのでしょうか。個人では払えるはずのない金額です。
いきなり $5,000 を突きつけられてしまいましたが、これからどうすればいいのでしょうか。まずは事実確認から入りましょう。下のリンクから米 Unisys 社のサイトをご覧いただき、本当に $5,000 が要求されていることをご確認ください。ひょっとすると、私を含めた周りの人があなたをだましているのかもしれませんし、大げさにあおっているのかもしれないのです。GIF 画像の問題が、あながちウソでも無さそうだということがわかりましたら、次の項へお進み下さい。この章が、GIF 画像の問題についてあなたの知識と判断の手助けになれば幸いです。
注意: 勘違いしないで下さい。すべての GIF 画像が非合法なのではありません。ライセンスを結んでいないツールで作成された GIF 画像が非合法なのです。
米 Unisys 社へのポインタ
上記の取得済みソフトハウスリストを見ると、Microsoft や Adobe など有料ソフトのメーカが並んでいます。これらのライセンス取得済みソフトを使って作成された GIF 画像は何の問題もありません。一方、私が愛用していた有名国産 256 色お絵かきソフト(フリーウェア)は、米 Unisys 社のライセンスを取得していません。ソフトのヘルプを読みかえすと、
[Q] GIFの特許の問題やばくないんですか?
[A] 場合によってはやばいと思います.(^^;
などと書かれているではないですか。場合によらずともヤバいと思います。
追記: と書いたのもつかの間。先日、このソフトがバージョンアップし、GIF に関する機能が全面撤廃されました。アニメーション GIF を作成できる使いやすいソフトであっただけに残念です。
このソフトに限らず、GIF フォーマットを扱うフリーウェアのほとんどが、ライセンスを取得していません。フリーウェア作者が米 Unisys 社とライセンスを交わすには、年間 $1,000 相当のロイヤリティが必要だと言われ、この額は徐々に増加する傾向にあるようです。というわけで、フリーウェアで GIF 画像を作成している私は、早急に何とかしなくてはなりません。ところであんたはどこのツールを使っているんだい? 何ぃ、Adobe 製だって? そりゃあ結構だ。何の問題も無い。
GIF は 1987 年に生まれたフォーマットで、圧縮のアルゴリズム部にそのころ普通に使われていた LZW アルゴリズムを採用しました。1994 年になって、LZW 特許をもつ 米 Unisys 社が、資金調達のために LZW アルゴリズムにライセンス料を要求してきたのです。米 Unisys 社は、最初はフリーウェア(非営利ソフト)はライセンス料を不要だとしていたのですが、後にフリーウェアであってもライセンスが必要だと主張を変えました。
そしてついに米 Unisys 社は、LZW 特許を侵害しているソフトウェアを使った GIF 画像を公開している Web サイトオーナーからも、特許使用料を払うように表明したのです。
その昔、私たちがチャットも ICQ も知らなかった時代、インターネットは本当に貧弱なものでした。インターネットで出来ることといえば、短い文章を送ったり受け取ったりするだけでした。それが GIF 画像を使うことによって、すばらしく見栄えのよいページが作れるようになったのです。これは特許モノでしょう、私たちは感謝しなくてはなりません。・・・というのが、米 Unisys 社の意見です。なるほど一理あります。
あなたは、次の場合に、コンピュータから人のプリントに何かを伝えることができます補足: 米 Unisys 社の特許は、GIF フォーマットそのものについては、何の影響もありません。ですから、LZW アルゴリズムを使用しない GIF 画像を作成するのは合法です。が、GIF といえば 99.99% 以上が LZW 圧縮ですし、その他の方法で圧縮された GIF 画像を、作ることも見ることも困難でしょう。
補足: LZW の特許については、IBM 社と米 Unisys 社が保有しています。この奇妙で複雑な事情は、両社から(ほぼ同時に)提出された特許申請について、米国特許庁はこれらが同一のものだと判断することができず、両社に特許を与えてしまったのが原因です。より早く特許申請を行なったのは、IBM 社です。
ホームページで GIF 画像を使う場合はいろいろあります。それぞれについて見ていきましょう。
たぶん問題ない行為
- ライセンス取得したツール(Microsoft や Adobe 製などの有料ソフト)で GIF 画像を作成し、Web サイトに置く。
- すでにある GIF 画像を、HTML の width, height 指定で拡大縮小する。
- すでにある GIF 画像のデータをいじることなく、透明 GIF の設定を変えたり、パレットを差し替えたり、2つ以上の GIF 画像を合体(アクセスカウンタ等)させたりする行為。
GIF 画像のデータ部の LZW 圧縮データを直接いじらなければ、平気です。
たぶん問題ある行為
- 問題行為 1: 自作の GIF 画像を、Web サイトに公開する
-
フリーウェアで作った GIF 画像を公開することは、もはやできなくなりました。
ライセンスを取得していないツール (フリーウェア全般) で GIF 画像を作成し、個人利用目的以外で使用する( 例: Web で公開する ) ことは、ライセンスに抵触します。Web ライセンス($5,000) を支払うか、またはライセンスのあるソフトで画像を作成すればOKです。
- 問題行為 2: 自作の GIF 画像を、Web サイトで配布する
-
GIF 素材の配布・バナー GIF 画像などの、ネット経由の配布は、もはやできなくなりました。
GIF 画像を配布するのは非常に困難で、Web ライセンス ($5,000) の適用すら受けることができません。単に公開する場合と異なり「インターネット経由の配布」行為は、有償無償の提供に関わらず、米 Unisys 社に自らライセンス料を交渉の上、個別の契約を結ばなくてはなりません。ライセンス料は、配布の形態や規模、サイトの知名度によって異なるでしょうが、$5,000 を下回ることは無いでしょう。
- 問題行為 3: ネット上から得た GIF 画像を、Web サイトに公開する
-
フリー素材として提供されている GIF 画像、サイトから手に入れたバナー GIF 画像、アクセスカウンタやBBSプログラムに添付されている GIF 画像などは、やはりライセンスに抵触します。例えその画像がライセンスを取得しているソフトウェアで作成されたものであったとしても、あなた自身がライセンスを取得していなければ、使うことはできないのです。Web ライセンス($5,000) を支払うか、またはライセンスのあるソフトを持っていればあなたはOKです。
ただ、あなたの頭を悩ます問題として、この画像が正規に配布されている GIF 画像で無い可能性があります。あなた自身はよくても、配布元が 米 Unisys 社から配布ライセンスを受けているかを確認する必要があります。実際問題として、配布元はライセンス無しに配っていることでしょう。
注意: ここではあくまで「ネットワーク上から得た」 GIF 画像の議論であって、本や CD-ROM などの「出版物から得た」 GIF 画像の場合は、また別の問題です。
- 問題行為 4: サーバサイドプログラムによって、GIF 画像を生成する
fly や gd ライブラリなどにより、動的に GIF 画像を生成し棒グラフなどを表示させることは、もはやできなくなりました。
そのソフトがライセンスを受けていればよいのですが、フリーで広まっている著名な GIF 生成エンジンのどれもが、ライセンスを取得していません。プログラムから GIF の機能は取り除かれ、替わりに PNG フォーマットがサポートされつつあります。
という状況です。GIF を扱っているフリーウェアは、徐々に GIF サポートを停止する方向にあります。また、GIF 画像の配布が禁止されてしまったことも大きな影響です。リンク用バナー GIF は、もう配ることも頂くことも出来なくなってしまいました。
米 Unisys 社と GIF 画像を自由に使用できるライセンスを提携しようと思うなら、3つの種類があります。
- ビルボード Web サイト LZW ライセンス( $5,000 )
- イントラネット LZW ライセンス ( $7,500 )
- その他のライセンス ( 米 Unisys 社と個別に交渉 )
それぞれについて、見ていきましょう。
1.5.1 ビルボード Web サイト LZW ライセンス
あなたが今、もっとも関心を寄せているライセンスです。このライセンスは、米 Unisys 社が用意してくれた中で、最もお買い得な"スペシャルライセンス"です。このライセンスは。非ライセンスソフトで作成された GIF 画像を公開することができるというものですが、若干の条件があります。
将来的にどのように検索エンジン- 完全にオープンであり、誰でも無料でアクセスできるサイト。
- 第三者による広告を表示していないサイト。
- メンバー制や、パスワードによるアクセス制限などの条件がかけていないサイト。
- オンラインショッピングサービス等を提供していない。
これらの条件に全て当てはまるサイトを、「ビルボード Web サイト」と呼びます。私のサイトは商売はしていませんし会員制のページもありませんので、「ビルボード Web サイト」に当てはまるのでしょう。ジオシティーズなど広告が表示されるウェブスペースは、第2の条件に抵触しますので、このライセンスを結ぶことができないでしょう。
さて、この条件に合致した Web サイトのオーナーは、$5,000 を支払うことで合法的に GIF 画像を公開することができます。GIF 画像の配布はできません。
1.5.2 イントラネット LZW ライセンス
次のライセンスは、企業向けのライセンスです。イントラネット LZW ライセンスは、企業サイトで、その社員だけが見れないようにアクセス制限がしかれている社内限定サイト用のライセンスです。ネットワークが、インターネットに接続しているかしていないかは関係なく、このライセンスが必要です。
ライセンスの金額は、$7,500 です。
1.5.3 その他
さて、あなたのサイトは、上記のお買い得スペシャルライセンスを受けられるでしょうか。残念ながら漏れてしまうケースには、次のようなものが考えられます。
- なにか商売を行っているサイト
- なにか広告や宣伝を行っているサイト
- 広告が表示される無料サーバスペース
- GIF 画像を「配布」したいサイト
これらの条件の場合、残念ながら米 Unisys 社と別個にライセンスを締結しなければなりません。$5,000 のお買い得チャンスを逃してしまったのですから、額は覚悟しましょう。
では、現在フリーウェアで作成された GIF 画像を扱っている人は、これからどうすればよいのでしょうか?
- 選択肢 1. : フリーウェアをやめ、Adobe 社などライセンス取得済みの有料ソフトを使う
お小遣いに余裕がある学生さん、プロのデザイナーから企業にいたるまで、もっとも現実的な選択です。
しかし、古くて問題を抱えた GIF フォーマットを使いつづけることになりますし、米 Unisys 社はソフトウェア代金を通して、あなたから間接的に利益を徴収しつづけることになります。
- 選択肢 2. : GIF を使うのをやめて、あたらしい PNG フォーマットへ移行する
ホームユーザにお勧めの選択。
手元にある GIF 画像は、コンバータにより PNG 画像に変換してしまいます。あなたが PNG フォーマットを採用することで、インターネット上の PNG の普及がより一層早まることになります。
高圧縮・フルカラーなど PNG フォーマットによる数々の恩恵を受けることができます。
- 選択肢 3. : GIF を使うのをやめて、既存の画像フォーマットに変換する
あまり奨められません。
最有力選択肢として、JPEG へのコンバートがあげられますが、GIF 画像として保存された画像を JPEG に変換するのは好ましくないことです。画像サイズ、画質ともに、不満足な結果を得ることでしょう。
BMP へのコンバートは、ファイルサイズの点でひどく不利になり、まず実用に耐えません。その他のフォーマットは、一般のブラウザーで表示できません。
- 選択肢 4. : まだもうちょっと GIF で様子を見る。
保守的・常識人なあなた向けの選択。
これまで世界中の人が、何の問題もなく使ってきた GIF 画像です。今なお、違法な GIF 画像を扱っている所は、世界中で 100万ページ以上はあるでしょう。常識的に考えて、自分がいきなり罪に問われる可能性は、とても低いです。動向を見守ることにします。
- 選択肢 5. : 米 Unisys 社に 5000 ドルのライセンス料を払う
大企業・大手ポータルサイト向けの選択。うっかり違法な GIF を使っていることがバレて裁判沙汰にでもなり、莫大な時間とマンパワーを浪費することを考えれば、50 万円は決して高くない保険です。
これらの選択肢の中から、1つ選ばなければなりません。
さて読み進めるうちに、あなたがだんだんとライセンス問題に飽きてきてはいないか、不安になってきました。このあたりから現実的なお話 ─── すなわち「バレる」か「バレない」か ─── をしていきましょう。
我々や米 Unisys 社は、どうやって GIF 画像が合法か違法かを見分けることができるのでしょうか?GIF 画像の中に特別なデジットでも含まれているのでしょうか?その方法をお教え致します。
幸いなことに、ここには電子透かしのような高度なテクノロジーが使われているわけではありません。GIF 画像を作成するソフトウェアの中には、GIF 画像自体にソフトウェア情報を埋め込むものが存在します。私の持っている 256 色お絵かきフリーウェアも数 bytes の文字情報を埋め込みます。こういう場合はかんたんにライセンス違反だとバレてしまうというわけです。ただそれだけです。
しかし多くのツールの場合、ソフトウェア情報は埋め込まれません。ソフトウェア情報が入っていなければ、その GIF 画像が違法性を持つか誰にも判断できません。今回、自分の GIF 画像が合法か違法かを簡単に調べることのできる Web ツールを作成しました。
第一VCRの発明者が誰であった「画像フォーマットアナライザ」
を使い、あなたの GIF 画像をスキャンにかけてください。スキャン結果にソフトウェア情報が入っていれば、それが映し出されますが、たいていは何も出てこないでしょう。
万が一ソフトウェア情報が見つかったとしても、あなたがそれを塗りつぶしてしまえば…?完全に証拠隠滅されます。やりましたね! しかし…残念なことに、それは手遅れかもしれません。次の項をご覧下さい。
実際に米 Unisys 社が全世界の Web サイトを見てまわり、そしてその GIF 画像が非ライセンスソフトウェアで作成されたものであると、ひとつひとつ調べてまわることができるのでしょうか。この世界中には数億もの Web サイトが存在し、GIF 画像の違法性調査には途方もない時間がかかりそうに思えます。
ところが、極めてポピュラーな方法で、これが可能になります。それは Web ロボットです。検索エンジンが Web のキーワードを集めて回っているのと全く同じ手法で、個人ページの GIF 画像の証拠を集めて回ることができます。検索エンジンのようにテキストを解析する必要がない分、非常に低コストで調査が出来ます。
そして、米 Unisys 社は実際にロボットを走らせています。1年中サーバ監視業務に従事しているサイト管理者ならば、米 Unisys 社の web ロボットを目撃していることでしょう。米 Unisys 社が何の目的で Web を調査しているかは我々の知るところではありませんが、GIF の調査を行なうには Web ロボットで十分可能です。一度ロボットに証拠保全されてしまうと、その後あなたが GIF 画像を PNG 画像にコンバートしようが、 GIF 画像のソフトウェア情報を塗りつぶして隠滅を図ろうとしようが、あなたが「GIF 前科持ち」であった履歴は消えることがありません。
貧乏人にとって、Adobe 社などの高価なグラフィックツールなどとても買えた物ではありません。当然、私のマシンにインストールされているのはフリーウェアが大半です。ライセンスを取得していないソフトで作った GIF 画像は当然、特許に違反します。しかし、実際問題として $5,000 を請求されることはあるのでしょうか?
米 Unisys 社の GIF 画像についてのお触れ書きは、私のようなちっぽけな個人ではなく、企業をターゲットにしていると考えられます。実際に米 Unisys 社からライセンス料を請求されたサイトは存在しますが、それはごく稀な例ですし、法的根拠を伴った請求ではありません。あなたは支払いを断ることが可能です。
ですので、あなたが GIF 画像をどのように使っていたとしても、おそらく Unisys 社から文句が来ることは無いと考えています。
もうひとつ嬉しい話があります。それは、米 Unisys 社の LZW 圧縮伸長アルゴリズム特許が、2003 年 6 月 20 日にその効力を失うということです。もう少しがまんすれば、堂々と GIF 画像を使うことができるようになります(と思うのですが、やっぱりだめかもしれません。)。
一方、えげつない特許の話をご紹介いたします。アメリカの特許は、その存在を知っていようが知っていまいが、違反したことが発覚した場合には、特許料の支払いを特許が申請された日にさかのぼって請求されます。もはや説明の必要のない大企業 Microsoft 社を例にとりますと、彼らはうっかり特許がからんだ圧縮方式を MS-DOS 6.0 に採用してしまったために、8億円相当の金額を支払わされてしまいました。特許違反がどれだけ痛いかを思い知らされる事件でした。
GIF 画像を使いつづける選択も悪くないかもしれません。そのうち経済力がついて有料グラフィックツールを買える日がやってくるでしょう。しかし、
GIF フォーマットは、もはやネットワーク標準たりうるフォーマットではありません
冷静な目で見ますと、今の GIF の地位は「広く普及はしているが、問題を多く抱えた太古の技術」です。次からは GIF 画像の欠点を改良し、全く新しい画像フォーマット PNG について、解説してゆきます。
米 Unisys 社は突然に(本当に突然に)ライセンス料を要求してきました。GIF を広く普及させておいて、いきなりライセンス料を徴収しようというやり口は、我々を怒らせるには十分でした。もはや GIF フォーマットに将来性が見出せなくなり、GIF に置き換える目的で作られたのが、PNG フォーマットです。
PNG フォーマットの主な特徴
- フルカラーはもちろん、最大で 280 兆色まで扱える。(GIF は 256色まで)
- 高い圧縮率。(同条件なら GIF より2割ほど省サイズ)
- GIF と同じく、可逆圧縮である。
- 透過色をいくつでも定義できる。(GIF は 1個だけ)
- GIF より優れたインターレース表示に対応している。
- ライセンスフリーである。
- その他、画像としての数々の拡張機能(ガンマ等)
フルカラーで可逆圧縮であるというのは、CG お絵かきさんにはなかなか嬉しいスペックです。これまでフルカラーCGを画質の損失なく Web 公開することが困難でしたが、PNG によってはじめて現実的なものとなりました。
PNG フォーマットは、ファイル圧縮形式「Zip」とまったく同一の圧縮アルゴリズム Deflation を採用しました。これは、特許上の問題を受けないために徹底したアルゴリズムです。Deflation は LZ77 圧縮とハフマン符号化の 2 段階圧縮を行ないます。
PNG 画像を扱うことのできるツールは飛躍的に増加しました。これらの画像ツールによって、現在の GIF 画像を PNG 画像に変換することはとても簡単です。PNG にすることで、数々の恩恵が受けられる一方、いくつかのデメリットも存在します。
GIF と比べたときの、PNG の主なデメリット
- インターレース PNG にすると、圧縮率が低下する。(GIF より不利)
- アニメーション PNG が存在しない。
- iモード端末で PNG 画像が表示できない。
普及度の問題もあれば、PNG の仕様そのものに問題があるケースもあります。PNG のデメリットもそうそう少なくありません。
また、額の血管が少々浮き気味の、反 GIF 派の方の意見に、次のような主張が見られます。
- フリーソフトで作成された GIF は「違法/犯罪」である。
- だから、あなたが今持っている GIF は、PNG 画像に変換すべきだ。
ごもっともな意見ですし、べつだん間違ってもいないのですが、大事なことを見落としてはいないでしょうか。それは、フリーウェアでのコンバート行為そのものが違法であるということです。非ライセンスソフトウェアでコンバートしたからといって、あなたが罪人であることに変わりはありません。(どうせバレやしませんが…。)
ならば、有料のコンバータを買えばよいのではないでしょうか。しかし、フンパツして有料ソフトを購入されたのであれば、おそらくそのソフトは(合法な)GIF 形式で保存ができるのですから、PNG に移行するまでもありません。ですので、GIF が違法だから PNG にしましょうという説得論は、少々筋が通らず強引であると感じます。有罪無罪という観点からこの問題を考えることは不毛であると考えています。
さて近年 GIF 画像のライセンス問題が膨れ上がり、PNG 画像の有用性が説かれてきました。にもかかわらず、あまり PNG 画像は GIF の完全に代わりになっているとは思えません。これはいったいなぜでしょう?
要因 1: Netscape Navigator 4 の功罪
-
Netscape Navigator 4 はスタイルシート(CSS)という HTML の方面で Web デザインの普及を遅らせた経緯で有名ですが、彼はまた PNG の分野でも普及を大きく遅らせました。
PNG ビューアが、フルスペックの PNG の機能に対応するのはたいへんに難しいことですが、基本的な PNG 画像の閲覧に対応させるのは、アマチュアプログラマーでも可能です。しかし、Netscape Navigator 4.x は、最もベーシックな機能である「透過 PNG」に、とうとう対応することはできませんでした。
Netscape Navigator の次のメジャーバージョンアップはなかなか行われませんでした。Navigator ユーザ率は徐々に落ち込み、20%→10%→5%→1%までに落ち込んだ末に、2002 年 8 月ようやく Netscape 7.0 が登場しました。このバージョンはもちろん 透過 PNG に対応した最先端のブラウザですが、いかんせん登場が遅すぎたために、普及するのは先の話です。
今となっては、透過 PNG 画像を表示できないユーザは 1 %程度にまで下がりましたが、それでも 100,000 人アクセスすると 1,000 人に対しては「アハハこのサイトかっこ悪いんでやんの」とマイナスのイメージをもたれてしまいます。透過すべき画像が透過されないことほど、格好の悪いことはありません。この状況は何より、PNG が商業的に使い物にならないことを意味しています。この1点のために、クライアントは PNG の使用を避け、ビジネス側への普及は絶たれてしまいました。企業サイトは顧客のために、そして Netscape Navigator 4 ユーザのために、今後も GIF 画像を使いつづけることでしょう。
要因 2: アニメーション GIF
個人ユーザへの普及を妨げたのが、なんといっても、まずアニメーション GIF の代替手段がないことです。アニメーション PNG といえる MNG フォーマットは、ブラウザの対応が遅れています。PNG 画像を JavaScript によってスライドショウをさせるのは HTML が煩雑です。Flash ムービーなら代替案として適しているのですが、コンバートするツールは少なく、HTMLの記述も多めです。
要因 3: アンチ GIF サイト
いっけん矛盾しているようですが、アンチ GIF サイトは PNG フォーマットの自然な普及を妨げました。初期のアンチ GIF サイトは、アメリカゆずりの好戦的・刺激的な文章によって、最大限の GIF の無能性と、最大限の PNG の有用性を語り、PNG のデメリットはうまく覆い隠しました。
極端に PNG 側にバイアスのかけられた論法には、一部のユーザからは爆発的に共感を得たものの、その他の大多数の一般ユーザを納得させることはできませんでした。そればかりか逆に、PNG 画像は
「PNG ?ああ、過激 PNG 推進派がやっきになって勧めているモノだよね。」
という印象を刷り込んでしましました。
冷静に GIF と PNG の両者を、メリットデメリットの双方から比較すればよかったのですが、偏向した PNG 推進論法の前では、抗いたくなるような心地になることでしょう。
要因 4: GIF 素材サイト
-
その次に影響が大きいのが、膨大な GIF 素材をかかえるサイトオーナーです。透過を使わない素材など考えられず、Netscape Navigator 4 ユーザのために透過 GIF を使わなければなりません。
彼らは被害者です。彼らは、PNG にコンバートすることで明らかにダウンロードユーザが減ってしまうことを考えると、やはり GIF を選択せざるを得ない思いに陥るでしょう。
さて早足でかけてきましたが、要は、GIF の特許問題が存在することと、GIF の代わりに PNG 画像というものが出てきたこと。この2つです。
GIF にしようか、PNG にしようか、まだ迷われていると思います。GIF に特許問題が存在することの事実を踏まえ、もし PNG 画像の導入に興味を持たれましたら、次の章へお進み下さい。GIF 画像と比較した時の、PNG の高機能性と現状での問題点について、ブラウザを使って実践しています。
0 コメント:
コメントを投稿